第4回笑い療法士認定のご報告

 癒しの環境研究会は2007年11月25日、第4回笑い療法士発表会を開き、笑い療法士3級として新たに77名の方を認定いたしました。4期生は2007年7月に認定講習を受講し、その後はフォローアップの課題に取り組み、笑い療法士候補生としての新しい日々に挑戦するなかで知力や感性を磨き、実践を積み重ねて来られました。職業は、医師や看護師などの医療・福祉スタッフのもみならず、一般の会社員や主婦などさまざまですが、「笑いで患者の自然治癒力を高める」「笑いを感染させて癒しの環境をつくる」。この思いと笑いの感染力の強さはみな共通です。同じ気持ちになれる仲間として、ひとつの出発点にたつことができました。
  5期生の認定講習は2008年4月に行ないます。ご一緒に学び、活動してくださる皆様の、ご応募をお待ちしています。
■第5回笑い療法士募集のお知らせ)

【関連記事】
■がん闘病中に目指した笑い療法士という仕事(産経新聞)
http://www.sankei.co.jp/yuyulife/mukiatte/200712/mkt071207002.htm

■笑い療法士、約300人に(CBニュース)
http://www.cabrain.net/news/article.do?newsId=13233

「笑い療法士」認定評価委員会
委員長:中島英雄(中央群馬脳神経外科病院院長・落語家 桂前治) 
委 員:田辺 功(朝日新聞編集委員)
委 員:星 和夫(ベトレヘムの園病院院長 青梅市立総合病院名誉院長)
委 員:高柳和江(癒しの環境研究会代表世話人・日本医科大学准教授)

特別講師:永曽信夫(「こえとことば」の授業担当)

◆第4回笑い療法士発表会プログラムより

  発表会当日に配布したプログラムから内容の一部をご紹介します。
◎アハハと笑ってダイエット 中島英雄(中央群馬脳神経外科病院理事長)
◎患者も医療者も笑顔をとりもどそう 田辺 功 (朝日新聞編集委員)
◎こえとことばの泉                  永曽信夫
◎笑い療法士への祝福と賛同のメッセージ
◎4期生のみなさんからの感想

アハハと笑ってダイエット
中島英雄 中央群馬脳神経外科病院理事長



コレステロールや中性脂肪が多い血液の人を「脂質代謝異常」と いい、以前は「高脂血症」と言っていいました。大抵は医師に「運 動をしなさい」と言われるはずですが、こういう人に限って食べる ことは好きでも運動は嫌い、面倒という人が殆どです。 私は「病院寄席」で笑いの前後で「中性脂肪」を測定させていた だきました。結果は大多数の人は笑った後?は中性脂肪が減少して いました(図1)。数人の人は逆に増加していました。文献を読みま すとストレスを与えると中性脂肪が増加するのだそうです。ですか ら、この増加した人たちにとっては「寄席」が余り面白くないか、 ストレスだったのでしょう。続いて当院でリハビリをしている方々 にもご協力いただき測定してみました(図2)。半数の人は減少して いましたが、半数の人は増えていました。これはきっとリハビリが 辛かった、ストレスだったのかもしれませんね。ですから嫌々ダイ エットするより楽しくエクササイズをしたり、運動すれば肥満の敵 である中性脂肪が減るという訳です。さてお太りの方、アハハと笑って ダイエットに励んで下さい。

患者も医療者も笑顔をとりもどそう
田辺 功 朝日新聞編集委員  
 普通の日本人の表情が険しくなったと感じる機会が多い。通勤の車内、路上、店内から会議の席まで同じようだ。昔はもっと笑顔やむだ話のやり取りが多かった印象がある。生きにくい世の中になったのだろうと思う。不安定な雇用形態が導く結果としてのワーキングプアやリストラはいまや無視できないほど日本の社会を根底から揺るがせている。  
  医師だけでなく、看護師などの医療職の多くは、激務の日常ノルマを消化するのに懸命で、患者の方を見向きする時間も少ない。思わぬ病気を宣告され、治療を受けている患者は不安がいっぱいで、顔がこわばっている。不安な患者ときりきり舞いの医療職で構成する病院は日常社会よりさらに笑顔の乏しい社会だといえる。
 ひとつの救いが「笑い療法士」だろう。患者に寄り添い、安心を配給し、笑顔の大切さを実感させてくれる太陽のような存在だ。笑顔を取り戻した患者が不機嫌な患者より絶対に治りが早いことはいくつもの証拠がある。今日の安心、喜びは明日からも複利でどんどん増える。医療者だって笑顔になる。こういうのを本当は「福利」と書くべきかな、なんて思ってしまう。
 

こえとことばの泉
永曽信夫  
★プロフィール 鈴鹿山脈に生まれ、舞台芸術に親しみ、今、立山山麓に棲んでいます。
 
  こえとことばは、みつめ合う二人の表情から生まれるのです。
その人の口元があなたの声を、その人の目元があなたの言葉を待っています。 その人の情動を感じ取ったあなたのからだから声が、言葉が溢れます。あなたの言語的機能が相関関係をもって働きます。
こえとことばの泉に枯れるということはないのです。
 
笑い療法士への 祝福・賛同のメッセージをいただきました。

上智大学名誉教授

アルフォンス・デーケン さん                        

ドイツの有名な定義に「ユーモアとは『にもかかわらず』笑うことである」というのがあります。つまり、自分は苦しんでいるのにもかかわらず、相手のために笑う。思いやりを示すのです。笑いの原点でしょう。ユーモアは心と心のふれあいの現われです。人間は腹を立てながら同時に笑うことはできません。試しにやってみてください。また、人間は笑うことのできる唯一の生き物であることを忘れないでください。


国立療養所多摩全生園 看護師長

井上絹枝 さん                        

「癒しの環境」「笑い療法士」の中身は、まさに人間と生活について考えられる「看護の心」そのものだと思います。看護師の笑い療法士は、陽光や風、音や匂いなどの自然の力を借りて、ケアに当たっていることが良く分かります。いつもは突然大きな声を出され、不安な顔になる方が、その日は笑顔で過ごさせているのです。側にいて安心できる“気”のようなもの、その力が波紋になあれと願います。

 


株式会社国際健康福祉機構

岩城祐子 さん                       

私は認知症になるのも、がっくり失意をすると発症すると経験上信じておりますので、毎日楽しく、「私は愛されている」と信じられる生活を送れば、認知症にもなりませんし、周囲の人々を幸せにしてあげたいと皆が考えていただけば、全員が幸せになるのです。ご成功を祈っています。


島根大学医学部附属病院長

小林祥泰 さん                        

2年前にたまたま私が「癒しの環境研究会」に参加したおかげで、当院でも笑い療法士が2名誕生しました。がん患者さんが院内で自主的に運営している「ほっとサロン」で毎月一緒に笑って癒しの環境作りに貢献しています。他院のがんサロンでも引っ張りだこです。本人の明るいキャラがあってこそですが、笑い療法士になるとその笑い感染力は明らかに強くなるようです。患者さんに笑顔を取り戻すお手伝いが出来るよう頑張って下さい。


科学ジャーナリスト、元NHK解説委員 日本科学技術ジャーナリスト会議会長

小出五郎 さん                        

お腹の底から笑うなんて、今の世の中に年に何回あるでしょうか。ゆとりのない競争社会で、ほとんどの人がストレスで疲れています。笑いを忘れています。病気は、そんな疲れたからだと心の隙を狙っているような気がします。病気になったときくらい笑おうじゃないですか。入院したときくらい大いに笑いましょうよ。そのほうが体も良くなるだけではなく、心もきっと元気を取り戻すことができます。
病気を機会に覚えたユーモアの知恵を、こんどは病気予備軍の現代人におしえてあげる。ちょっとカッコイイと思いませんか。


学校法人後藤学園附属リンパ浮腫治療室 室長

佐藤佳代子 さん                       

第4期笑い療法士のご誕生!心よりおめでとうございます。300人を超える全国の笑い療法士の皆さま方が、今この瞬間にも目の前にいる愛しい人たちを満面の笑みにさせてしまうようすをとても楽しく想像しています。
笑いは愛と感謝そのもの。感動が細胞に充満した瞬間、ワハハ!と溢れてきます。
この活動の輪が年々広がりをみせるのは、高柳和江先生をはじめ皆さまの笑顔とご尽力の賜物です。これからも応援しています


藤田保健衛生大学医学部第一病理学 教授

堤 寛 さん                       

笑い療法士よ、来い!今年6月末、私は高柳先生にSOSメールした。病理診断のセカンドオピニオンを受けたことをきっかけに2年間メル友になっていた30歳代の女性末期がん患者に笑い療法士を派遣してほしいと思ったからだ。残念ながら、まだ派遣できる体制ではないとのことで断念した。7月上旬に亡くなるまで、本人も家族も泣き通しで、どうしても彼女とお母さんを笑わせてあげたかった――。笑い療法士の宅配が実現する日を心より楽しみにしています。


国立がんセンター中央病院緩和ケア科鍼灸担当

鈴木春子 さん                      

第37回研究会「温める癒し」でお話しさせていただきました。その時はじめて笑い療法士の方の報告を聞きました。おかしみの中に哀しみや慈しみがあるような気がしました。そのうち、おかしくて、おかしくて笑いが止まりませんでした。笑いのツボッてやっぱりあるんですね。気持ちよく大笑いしました。11月25日とてもとても頼みです。そしてこれからの笑い療法士の活動に期待が大!であります。


財団法人操風会 岡山旭東病院 院長

土井章弘 さん                      

生まれたての赤ちゃんは笑顔や笑いで人を惹きつけ、幸せを運んでくれます。笑いは人間だけが持っている本能です。赤ちゃんの笑顔や笑いに人が集まって来るように、 笑顔のある人の周りには人が集まってきて、その笑顔やユーモアは、人を癒し、病を軽くし、元気を与えたくれます。 笑いは伝染し、感染力がとても強い笑いビールスによる感染症です。笑いを感染させ、人を元気にし、病を癒す、笑い療法士の皆様方の活躍を心から期待しています。


東京大学医学部附属病院放射線科准教授/緩和ケア診療部長

中川恵一 さん                      

笑いは、がんの治療では欠かせません。これは、患者さんだけでなく、医師やナースにも必要です。
人間は、生き物で、命に限りがある存在です。このことはつらい宿命ですが、この壁を乗り越えるためには、笑いが大事です。
笑い療法士を応援します。


東洋エンジニアリング株式会社取締役会長

永田雄志 さん                      

「笑いで患者の自然治癒力を高める」という発想と活動に、病で苦しんでいる人達がまわりに多く居た私は、我が意を得たりとばかりに心を動かされました。そして「生きているのも悪くないな」と思えるようなほっこりした気持ちになる笑いとユーモア、その中心的役割を担う「笑いの療法士」さん達こそは間違いなく幸せと元気の運び屋です。この活動の輪が大きく広がり、いつの日か当たり前になることを心から願っています。


総合人間研究所

早川一光 さん                       

本当の笑いってね  泣き笑い なんです。
人間ってね  特に、一番苦しみ  悩んだ人こそ、
 それを乗り越えた時、
又は  じたばたしても仕方ないと納得、合点した時
 笑うんです。

 この笑いが最高の笑いなんです。

三雲社 『CCJAPAN』編集長

森田広一郎 さん                      

「笑い」のエネルギーというのは、非常に強力なものだと思う。17歳でクローン病という難病を患い、何もかもに絶望し自分を含めた全てを憎み、誰とも会うことなくひとりきりで小難しい本ばかりを読みあさっていたそんなある日、ふとTVを見て、反射的に笑ってしまった。そう、小難しい理由を考えることもなく、1年半ぶりに、不本意にも、つい笑わされてしまったのだ。そのときの強引なパワーといったらなかった。小難しい理屈によって堅く閉ざされた扉に、有無も言わさぬ力で風穴を開け、新鮮な空気を吹き込んでくれたのだ。自分にとって、最悪の状況から抜け出すために必要だったのは、哲学や理論や芸術ではなく「笑い」だった。優しく、大きく、強い「笑い」のエネルギーを多くの方にあたえてください。


4期生のみなさんからの感想
  ※フォローアップ報告書(活動報告、近況報告などのおたよりから抜粋。
 文中のマイルとは、笑い療法士活動報告の内容に応じて、
 自己評価でつけるマイルのことです。

笑い療法士を目指してよかった!

マイルを貯めるため、人と触れ合うことが待ち遠しく思えるようになりました。提出のためのレポートを推敲していると、その時々の皆さんの笑顔がよみがえってきて、私自身またまたにっこりしてしまいました。笑いは伝染力だけでなく耐久力もあると知りました。/O・Kさん(パート勤務) 愛知県

毎日1マイルが目標でしたが、本当に自分にとってはそれがキツイことがよく分かりました。自分を変えない限り無理ですね。今回の課題で、目線を変えることで、見えるものが違ってくることに改めて気付きました。そして課題をすることにより、自分の中で改革が起こり始めたように思います。「バカになれ!」。私が学生に対してよく使う言葉です。それが、わが身に降りかかってくるとは思いませんでした(笑)。それは、けっしてパフォーマンスを人前でする度胸のことだけではありません。もっと、奥深いものも含みます……心の垣根を取り払うことでしょうか。私はまだ、その本質をつかんでいません。この講習会を受講しなければ、このようなことは考えなかったと思います。/W・Tさん(大学教諭) 兵庫県

療の現場はストレスフルな毎日ですが、候補生として日常的に笑い合える雰囲気づくりに努めています。まだ、環境はあまり変わりませんが、(笑い療法士の勉強をして)私自身の気持ちが楽になりました。引き続き頑張ります。/K・Tさん(看護師) 千葉県

講習を受けて思うこと

2日間の講習を思い出しながら報告書をまとめました。永曽先生の話術のすばらしさ、田辺先生が真面目な顔をしてお話してくださった「ふるさと」、いずれも意思伝達の手段としての言葉を大切にせよとのメッセージであったのだと納得いたしました。中島先生の落語と高柳先生の寄り添うことの大切さの間で感じたギャップも、手段と目的であり同一線上にあるのものだということで腑に落ちました。
/K・Hさん(医師) 群馬県

本当に最近ですが、人の会話を聞いている時でも、「私ならもっとおもしろい返答するのに!もったいない」とまで、思う余裕が出てきました。仕事をしていても、笑っている時間が増えたと思います。宿題は、かなり大変ですが、確実に身になっている実感があります。自分でも、これからが楽しみになっています。/O・Tさん(看護師)

今回、見知らぬ方から何度か「こんにちは」と声を掛けられました。これは講習以前にはあまりなかったことです。一度はかなりご年配の方につかまり、延々と身の上話を聞かされたこともありました。どちらかというと声をかけにくいほうではないかと自分では思っておりましたので、できるだけ壁を作らない様にすることと、眉間に皺を作らない様にすることを心掛けていたのがよかったのかもしれません。いかにして人の笑いを引き出すか、それによってどんな影響を回りに与えていけるか…。これは本当にむずかしいものでしたし、つくづく考えさせられました。/M・Yさん(会社員) 神奈川県

「心にしみる温かい笑いについての報告書」から

<ある転移性脳腫瘍の51歳女性Aさんとのやりとりから経験させていただいたこと>
私はこのとき「ここでなんて言ったら良いのだろうか。笑い療法士としての声かけとは一体どういうものなのか。」と自分の中で幾度も問いかけをしました。考えても考えてもその瞬間瞬間で常に状況は違っていてはっきり答えは出ませんでした。ただ、心が萎えてしまっている状況で、その方の微笑をいかに引き出すような声かけをする準備が常に自分にできているかがとても重要になるのだと今は考えています。(中略)その場に応じて自分の持っている引き出しから声かけをできるように、よりいっそうの努力と実践をしていこうと考えます。/A・Hさん(看護師) 岡山県

温かい笑いを引き出すためには相手との信頼関係が成立していることが第一である。こちらを信頼し安心して心を開いてくれないことには会話は成立せず警戒され心を閉ざされるか逃げられるのがせいぜいだ。そのためにはまず適当な距離をおいて座り、視線の高さを合わせる。はじめはこちらからの挨拶だけでもよい。その際、声の大きさや話すスピードにも配慮が必要である。大きな声で早口にまくし立てたのでは逆効果である。
口をきいてくれなかったら、きいてくれるまで何回でも足を運ぶ。挨拶の言葉がでてきたらあとは会話のきっかけだ。きっかけをつくるためには、駄洒落のひとつでも飛ばしてみる。相手の警戒心が解ければあとは訴えをよく聴く。その際に幅広く色々な知識を持っていれば相手に合わせることができ話題は途切れず自然会話もスムーズになる。講習会で引き出しの重要性を強調されたのはこのことだと思う。そのうちに何でも話ができるようになれば、お互い思いを共有することができる。そうなれば温かい笑いが出てくるのは時間の問題だろう。
他の病院から私を頼って移ってこられた30代の女性腎不全患者さんと、以上のようなことに気をつけ、仕事が保育士であること、将来に対する不安があることなどの情報を集めたあと相手の表情を見ながら何回かに分けて充分時間をとって、じっくり今後の見通し、治療についてお話をしたら、硬い表情が徐々に和らぎ3回目にはわかった様子でにっこり微笑んでくれ、とてもうれしかった。温かい笑いの難しさと引き出した時の充実感を味わった。/K・Hさん(内科医)群馬県


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