会からのお知らせ
最終更新:2011年 4月18日 月曜日
◆第11回癒しの環境研究会京都大会の開催にあたって◆
「いのちの対話と癒し」

大会長 齋藤ゆみ
  (京都大学医学研究科人間健康科学系専攻教授)

 

 今、人間社会のいたるところでいのちが病んでいると感じる人は多いと思います。それはまた、人のいのちに限ったことではなく、いのちのゆりかご:地球そのものが瀕死の状態にあるとの危惧にもつながってもいます。「人のいのち」は地球上のあらゆる「いのち」とつながり、あらゆるいのちの恩恵を受けて存在していると言えます。生物界の頂点に立つ人は、自らのいのちをいつくしむと同時に、地球上のあらゆるいのち、をもいつくしむことを忘れてはならないでしょう。自然の破壊は「人の内なる自然破壊」にもつながると考えられるからです。そこで、本大会のテーマは「いのちの対話と癒し」としました。あらゆるいのちは細胞のレベル、自然界、人間社会を問わず、「様々な形の対話」を通して自らの課題を乗り越え、平衡や安定、安寧にたどりついていると考えられます。
 京都大会では「いのちとは」、「いのちの在り様」、「いのちの再生」などをキーワードにわれわれ「やめる人々」を「真のいやし」へ誘う道を探ってみたいと思います。
 プログラムがどのようなお膳立てになっているか簡単にご説明させて戴きます。第7回大会で特別講演をされた辰巳先生は,人は「魂が根本的に癒されないと本当の安心・立命には至らない」というお話をされました。私は人が根源からの癒しに至るには、まず、人の起源を知ること、地球上のすべての生命(いのち)はつながり、循環していることを知ることから始めるべきではないかと思っています。「すべてのいのちの連鎖」の中にあることを知ったとき人は根源からの癒しの手がかりを得ることができるのではないかと思います。そこでまず科学者のお立場から、生命(いのち)を語っておられる著名な3人の先生にお話を伺いたいと思います。
 まず、特別講演としてJT生命誌研究館 館長の中村桂子先生には生命の連鎖と生命誌のお話を伺います。京都のわらじ医者として半世紀以上に亘って、「患者のいのちに」向き合ってこられた早川一光先生には「人の命の在り様」についてお話を伺います。そして教育講演では,がんなどの「高度医療と癒し」や21世紀の医療といわれる再生医療とiPS細胞などを話題に会を進めたいと思います。
 また、本会では、新しい試みとして,多くの人々が一堂に会して地球社会のさまざまな階層に発生しているいのちひずみを見つめ、癒しの力で「いのちの再生」につながる路を探す「メタソシオ」形式のシンポジウムを展開したいと考えています
 例えば人は病によっていのちのひずみを感じます。しかし、その中には病を乗り越え,それまで以上に「意義深い人生」を送っている人は大勢います。「病」でさえ人の「命の可能性と再生」をもたらす「いのちの力」であることを伝えています。いま、子供達のいのちも病んでいます。難病を抱えた子供達、社会への適応障害に苦しむ子供達、親の愛に飢えた子ども達、彼らのために今、どんないのちの癒しと再生の環境が育まれているでしょうか。超高齢化社会の日本ではいま人生の先輩:高齢者も病んでいます。しかし、それぞれの新たな生の在り様への模索と挑戦も始まっています。更に、本大会準備のさなかの3月11日に、日本は未曾有の自然災害・東日本大震災にみまわれ、2万8000人以上の尊い命が一瞬にして奪われるという筆舌に尽くしがたい経験をしました。そして今だ、被災者の方々をはじめ、日本中の人々が不安のなかで生活しておられます。一日でも早く「心が癒され」、あたりまえの日常を取り戻せることを願わずにはおられません。この期にその不安や困難を乗越え生き抜くための新たな癒しの環境とはどのようなものかを、本大会で語り合う意議は絶大と考えます。シンポジウムTではそのような課題に地道に、そして果敢に取り組んでおられる同志の皆さんにお集まりいただき、あらゆる対話のチャンネルでつながる「いのちの対話」を燎原の火のごとく広めたいと考えます。
 また、「文化と癒し」のこころと題して「笑いや狂言の癒し」、「茶道・華道における癒し」、「禅と癒し」など京都らしさを堪能しながら、日本人の心の安寧と癒しの作法について学んでみたいと存じます。
 日本中から多くの皆様のご参集が戴けますよう心よりお待ち申し上げております。


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