会からのお知らせ
最終更新:2012年 5月17日 木曜日


◆第12回癒しの環境研究会和歌山大会の開催にあたって◆

 

 「癒しの環境研究会」は、平成6年12月に発足し、病院で働く全ての職種の人たち、建築家やアーティスト、社会のオピニオンリーダーが中心となって、病院が真に癒しの場となるための建設的な提案を行ってきました。年1回の全国大会も今回が12回目となります。医療の現場は、病気を診断し治療すると同時に、病を持った人間の心を癒す場所でなければなりません。そのためには、医療者は癒しの意味を理解し、癒しの心を持って医療に従事する必要があります。
 昨年3月に起きた東日本大震災と福島での原発事故により、日本の国土は大きく傷つきました。多くの方が亡くなり、多くの方が愛する家族や友人を亡くし、生活の基盤を失い、そのことで全ての日本人の心が深く傷ついています。それに加えて目に余る政治の混迷と経済的な不況により、1年以上経った今なお多くの方が困難な状況から抜け出せず、私たち日本人は不甲斐無さに自信を失いかけています。
 このような時期に、日本人の心のふるさとである紀伊半島で本大会を開催することの意義は大きいと考えます。平成16年にユネスコの世界文化遺産に認定された「紀伊山地の霊場と参詣道」における、日本人の心のあり方、自然との関わり方をもう一度見直すことによって、日本の再生力、日本人としての誇りと自信を取り戻して行けるのではないでしょうか。
 そのような願いを込めて本大会のメインテーマを『魂から蘇えるケア・マインドとは----「和」の知恵・心と技』とさせていただきました。「和」には、「日本」、「和歌山」、皆で力を合わせる「和」の3つの意味を込めました。まず、特別講演として、「祈りと蘇りのみち」としての「紀伊山地の霊場と参詣道」の歴史的・文化的背景について、世界遺産登録に尽力された小田誠太郎先生に語っていただきます。
 本大会ではさらに、「スピリチュアル・ケア」「笑いと医療」「環境問題」「在宅医療のあり方」など、私たちの身の回りの諸問題を取り上げ、掘り下げて考えてみたいと思います。
日本人の2人に1人が癌になるという時代、癌患者の苦痛にどのように向き合えばよいのか、というのは大きな問題です。癌患者は身体的・精神的・社会的苦痛に加えて、「どうして私はこの様に苦しまなければならないのか、私は一体何のために生まれて来たのか?」という根源的な問いかけ、魂の苦痛に苛まれています。「スピリチュアル・ケアとは何か?どうしたら魂が救われるのか?」ということを高野山大学の森崎雅宝先生と考えます。森崎先生は、白浜町三段壁周辺にて、自殺防止・保護活動も行われています。
 また、私たちは「笑い」が心や身体にいい影響を与えてくれることを経験的に知っています。心から笑ったあとの爽快さは何物にも代えがたいこと、笑顔が対人関係において極めて重要な役割を果たしていることをよく知っています。村上和雄先生にはポシティブな感情がよい遺伝子のスイッチをONにするということについて、大平哲也先生には笑いが身体や健康に与える影響について、「楽しく」お話していただきます。「笑い」の癒し効果を医学的・科学的にとらえてみたいと思います。
 今、地球環境は危機に瀕しています。そしてあの人災とも言うべき福島第一原発の事故は、私たちに否が応でも放射性物質の恐ろしさを思い知らせてくれました。生態系の中で利用され循環して行くもの以外、私たちは環境に排出してはならないのです。今回、環境にまき散らされた放射性物質は生態系の中で濃縮され、私たちの身体に取り込まれて内部被曝を起こし、たとえ少量でも確実に遺伝子を傷つけて行くのです。科学の力で制御不可能なまま、政治的・経済的な圧力により原発は推進され、少なくとも福島の人たちの生活は根こそぎ破壊され、長期的に見れば確実に生命も蝕まれているのです。この方向を推し進めて人類は大丈夫なのか、という疑問を世界中の人たちが抱き始めています。一方中国では、経済発展とともに想像を絶する環境破壊が進み、砂漠化の進行から黄砂による健康被害は日本に住む私たちにも及んでいます。
中国で植林活動に取り組んでおられる深尾葉子先生、原発により人類はパンドラの箱を開けてしまったと言われる宇宙物理学者、池内了先生、「原発危機と東大話法」の著者、安冨歩先生、宇宙から見た地球の映像を交えたJAXAの上野精一部長のお話により、「私たちの生活・生命」と「人類・地球の未来」について、これまでにない大きな視点で考えて行きたいと思います。
我が国は、超少子高齢化社会に向かっています。そして、団塊の世代が後期高齢者になる頃、これまで経験したことのない「多死社会」が間違いなく訪れます。大多数の人たちは病院ではなく、在宅で亡くなって行かざるを得ないことから、「在宅医療」の重要性がクローズアップされています。2日目のシンポジウム2では、最後まで充実した人生を生きるために、これからの在宅医療とリハビリのあり方を考えます。
その他、教育講演として、大学病院は大災害にどう備えるべきか、ということを小林祥泰先生に伺います。また、和歌山出身の建築家、広谷純弘さんには、「森」の癒しと「木」を使った癒しの環境の創出についてお話していただきます。
さらに、山上の聖地、高野山や、白浜温泉〜熊野古道、本宮〜十津川温泉など、実際に紀伊山地に足を運んでいただけるよう、オプショナルツアーも企画致しました。
本大会を実り多きものにするために、日本中から多くの皆様が和歌山にご参集いただけますよう、心よりお待ち申し上げております。


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