アルツハイマー病、権利紹介

「アルツハイマー病、権利紹介」と題する記事が、2000年8月20日付けの朝日新聞日曜版で紹介されました。この後、研究会に問い合わせも多いので、権利の条文などもまとめておきます。

 記事は次のような内容でした。

 子どもではなく大人として扱われる。表現をまじめに受け止めてもらえる……。米国の老人施設でうたわれている「アルツハイマー病患者の権利」が、「癒しの環境研究会」(代表世話人、高柳和江・日本医科大学助教授)で紹介された。
 ヘリオス会病院(埼玉県川里村)の森田仁士・院長が今年一月、カリフォルニア州ヘメットにあるクリスチャン・ヘリテージ・ガーデンズを訪問した。老人中心の介護をめざす「エデン運動」に参加する約百五十施設の一つで、パンフレットに「アルツハイマー病の権利章典」と「アルツハイマー病患者からのお願い」が記載されていた。
 「権利」は十二条あり、ほかに▽診断名を知らされる▽毎日を有意義な活動で楽しむ▽定期的に屋外に出られる▽よく訓練された人に世話される権利ーなど。また、「お願い」は、病んでいるのは本意でないことを強く訴え、私のことを我慢して下さい▽話しかけて下さい▽尊敬をもって扱ってくださいーなど十項目を挙げている。(朝日新聞)


 アルツハイマー病患者の権利

 1.すべての情報提供を受ける
 2.適切な継続的な医療ケアを受ける
 3.できるだけ生産的な仕事や遊びをする
 4.大人として扱われ、子ども扱いされない
 5.表現した感情は真剣に受けとめられること
 6.可能であれば、抗精神薬を使わない
 7.安全で構造的に安心な環境で生活する
 8.毎日、意味のある活動を楽しめる
 9.規則的に戸外に出る
10.抱きしめてもらう(ハグ)、なでてもらう、握手をしてもらう
11.文化的宗教的なことを含め、個人的な人生を知っている人と一緒にいる
12.痴呆のケアをよく理解している人からケアを受ける

 アルツハイマー病患者からのお願い

 1.どうぞ、私のことを我慢してー私が器質的な病気のために自立できない、無力な犠牲者だと思い出して下さい。
 2.どうぞ、私に親切にしてー毎日毎日が長くて、混乱している。親切にしてもらうことが1日のうちで、とても特別な出来事です。
 3.どうぞ、私に話しかけてー答えられなくても、私にはあなたの声は聞こえる。時に、言うこともわかります。
 4.私の気持ちを考えてー感情って、私の中ではまだ、生きている。
 5.人間的尊厳があり、尊敬される人として扱って...私があなたの立場だったら、喜んでお世話をします。
 6.私の過去を思い出してー昔は健康で、生き生きとした人間だったって。愛し、笑い、能力も知性もあったって。
 7.私の現在を思ってー私は怖がっている人間。私は愛すべき夫〔妻、父、母、祖父、祖母、おば、おじ〕。でも、家族も家庭もなくなってしまった。
 8.私の将来を考えてーどう思われようと、いつも明日に望みをかけています。
 9.私のために祈ってー時間と永遠の間の霧の中でさまよっている人間です。あなたは私にとってかけがえのない存在。
10.私を愛してーあなたがくれる愛は私たちの生命を永久に照らしてくれる贈り物です。