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会誌『癒しの環境』vol.13 No.2
(2008年12月26日刊行)

「よみがえる生命の息吹―――温泉と癒し」
  ―第38回研究会・第7回全国大会報告−

〜最新号の巻頭言から〜
会報

 大辞泉によると、「よみ‐がえ・る」【蘇る/甦る】は《黄泉(よみ)から帰る意》で1 死んだもの、死にかけたものが生きかえる。蘇生する。2 一度衰退したものが、再び盛んになる。という2つの意味がある。今回の大会では、病気で、ストレスで、弱くなったからだと心を生き返らせるものとして、また、生きるエネルギー、気力がなくなったものを盛んにして、元気を復活させるものとしてのよみがえる生命の息吹というタイトルが選ばれた。 
 日本人は、癒しイコール温泉をイメージする。鹿もサルも、怪我をしたら温泉につかっていた。生き物は温泉で傷が治る。しかしながら、キズがあると風呂に入ってはいけないという信仰で、近代の日本人は、病気になると風呂に入らなかった。全身の血行がよくなれば、慢性心不全・閉塞性動脈硬化症・慢性疲労症候群・線維筋痛などの難治性疾患に効果があると思われるのに、いまだに風呂に入ってはいけないと言われる。
 さらには、病気というストレスにさらされて弱っているところで、手術、抗がん剤、放射線療法などというさらなるストレスをかける。身体疾患を持っている日本人の4割はうつ病を合併しているというデータがある。うつ病を持った心筋梗塞患者はうつ病の合併のない患者に比べて、非常に死亡率が高い。
 熱でHSP(Heat Shock Protein)というストレスと闘うたんぱく質が高まることもわかり、愛知医科大学放射線科の伊藤要子准教授は42℃のお風呂を推奨し、鹿児島大学の田中信行教授は全身を均等に 60℃の乾式遠赤外線サウナ浴による「温熱療法」を報告してきた。深部体温を約1.0℃ 〜1.2℃上昇させるのがコツである。
 田中教授は難病の勉強をするために米国留学したが、「日本人の何人がその病気にかかるのか。その少ない人間を助けるだけにあなたの力を使うのか」と問われて、先端医療と思われてきた研究を断念し、リハビリテーションに人生を賭けることにしたとうかがっている。脳卒中の後のリハビリだけでない、すべての疾患のリハビリだ。鹿児島大学で田中教授の後任の鄭忠和教授は入浴やサウナによる温熱療法を「和む・温もり療法」すなわち和温療法として世界に広めた。「和温療法」は全身の血管機能を改善し、中枢・末梢の自律神経や神経体液性因子(ホルモン活性)を是正し、自己免疫や生体防御機構を賦活化する。従来の「温熱療法」とは「癌に対する高熱での局所療法」として認知されていたが、副作用も報告され、盛んではない。しかし、「和温療法」の効果発現には遺伝子レベル、分子レベル、細胞レベルで深く関与し、生体の回復に重要な役割を演じていることも証明した。リハビリも世界の先端を行く。そして、多くの人を助ける。
 先端医療検査でMRやCTなど、一見、侵襲の少ないようにみえるものはある。しかしながら、MRは被爆がない代わりに、30分くらいの時間がかかるために、患者さんにとって苦痛である。とくに重症の患者さんには30分動かずにいることは、非常につらい。「で、その検査を受けて治してくれるの?」とききたくなる。本来医療とは患者の苦痛を取るものなのに、苦痛を取るからという最終目的アウトカムのために、苦痛と我慢を強いるのは医療ではない。治療のプロセスでの苦痛は無視されてきた。
 安全で副作用がなく、患者さんの気分を和ませる療法、重症患者さんにも安全で安心でき、しかも経済的であることも、治療法として必須の条件だ。著名な効果をもたらす温泉と癒しの環境は、切っても切れない。いろいろな視点からこの特集で生命の息吹をよみがえらせてください。


癒しの環境研究会代表世話人
日本医科大学医療管理学教室  高柳 和江


最新号・主要目次
『癒しの環境』Vol.13 No.2
 CONTENTS 2008.12月
特集「よみがえる生命の息吹――温泉と癒し」 −第7回全国大会報告−
 第7回全国大会にあたって ・・・・・・・・・大分県厚生連鶴見病院 院長 明石光伸
 歓迎のごあいさつ 大分県知事 ・・・・・・大分県知事 広瀬勝貞

市民公開講座1
癒しの道程

料理研究家 辰巳芳子 
市民公開講座2
癒しの環境とは

国立がんセンター総長 垣添忠生
特別講演1
温泉の効能

鹿児島大学名誉教授 田中信行 
特別講演2
未来長寿社会の創造を目指して

日本尊厳死協会理事長 名古屋学芸大学学長 井形昭弘 
モーニングセミナー
栄養療法における癒し ――エコ・ニュートリション(Eco-Nutrition)への潮流

東京都保健医療公社大久保病院 外科部長 丸山道生
分科会1 水の持つ癒しの力
土にもぐった水 ――ヒトは何故湧き出す泉を甘いと感じるのか

立正大学地球環境科学部教授 河野 忠
食べ物の中にとどまった水 ――ヒトは何故豆腐を食べると懐かしく思うのか

EN大塚製薬株式会社 上坂英二
からだの中を流れる水 ――ヒトはなぜ水を飲むのか

聖マリア病院小児外科診療科長  知光
分科会2 心の中の表現の癒し
オーガナイザーからのメッセージ

株式会社ZEN 安野文子
フラメンコから癒しの旅へ

日本フラメンコ協会理事 フラメンコ舞踊家 東仲一矩
分科会3 温泉と癒し
どうして日本人は温泉を入浴にしか使わないのか

NPO法人鉄輪湯けむり倶楽部 代表理事 甲斐賢一
地域づくりから生まれる癒し

由布院玉の湯代表取締役 由布院温泉観光協会会長 桑野和泉
温泉入浴による癒しの評価

大分大学公衆衛生医学講座 准教授 青野裕士
分科会4 笑い療法士見参!
癒しの環境研究会認定・笑い療法士の育て方

日本医科大学医療管理学教室准教授 癒しの環境研究会代表世話人 高柳和江
震災のとき、つらさを救ってくれた笑いの力…

笑い療法士1期生・看護師 山下美香
笑うことで進行胃がんが改善した

笑い療法士2期生・内科医 野地 暁
鎧を脱ぎ捨てる「挨拶の大切さ

笑い療法士2期生・精神科医 阪口周二
笑いの入れ歯、笑いのサプリ実践編

笑い療法士3期生・歯科医 河野秀樹
一般演題A−1 患者さんの心と医療者  座長:藤原秀臣(土浦協同病院院長)
ヒューマンタッチ 〜自分を取り戻した心の輝き〜

大久保病院 ユイコハウス
看護場面におけるコミュニケーションの振り返りからの学習成果
  〜患者へ思いをよせ、気遣いができる看護師の育成を目指した院内教育とは〜




大分記念病院 宮川ミカ
患者さんのシャツははだけていませんか? 〜職員の体験から得られた不快感への気づき〜



大久保病院 石松正樹
認知症を交えての利用者のトラブル解決

四日市医療生活協同組合デイサービスいくわ 竹平野里絵
一般演題A−2 癒しのプロデュース 座長:穂積恒(外旭川病院院長)
院内における『癒しのイベント』についての一考察

済生会茨木病院 井村智弘
お楽しみ会とレクリエーションの効果


大久保病院 小野智弘
利用者さん主体による夏祭り

四日市医療生活協同組合デイサービスいくわ 水谷みつる
ここは久住の温泉宿…〜夜間の温泉足浴は睡眠確保で笑顔倍増!!〜



介護老人保健施設ヴァル・ド・グラスくじゅう 森田智洋
 
癒しの空問としてのヒーリングルーム(癒しの部屋)効果



取手協同病院 吉田公代
一般演題A−3 患者安全と安心のサポート 座長:土井章弘(岡山旭東病院院長)
もてなしの気持ちをこめた外来看護の実践

取手協同病院 黒田かよ子
大学保健室(ヘルスクリニック)における「癒し」の提供について



立命館アジア太平洋大学APUヘルスクリニック 河合晃子
患者のニードに沿って

ちゅうざん病院 安里優子
術前挨拶による不安の軽減 〜術前訪問をより良いものにするための取り組み〜



厚生連鶴見病院 園田陽子
呼吸法実習――腹式呼吸の誤解を解く

健康談話室主宰 田渕英三く
一般演題A−4 不安を癒す  座長:高田三千尋(大分記念病院名誉理事長)
『ちーっと行ってくる』を見守り続けて 〜趣味を活かした環境づくり〜

グループホームくたみのもり 吉田竜一
不穏状態にある患者と向き合った精神科看護者の看護実践 
〜現象学的アプローチによるケアリングについての一考察〜




自治医科大学看護学部 田中京子
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)における大腿骨頚部骨苧人工骨頭置換術後のリハビリテーション



グループホーム水沢コスモス 永澤智子
一般演題B−1 医療提供者と癒しの環境  座長:山田泰子(大阪府立母子保健総合医療センター)
心に光を 〜フロアマネージャーの役割〜

出田眼科病院 田尻友子
病院外来における聴き上手はコミュニケーション上手

田主丸中央病院 下川朱美
ストレスが溜まる窓口業務、どうしたら癒される? 

京都きづ川病院 矢田洋子
患者様も職員もみんな癒された文化月間

京都きづ川病院 林よし子 
入院生活を支えるための環境作り 〜介護士として“おもてなし”について考える〜



別府リハビリテーションセンター 中野良子
一般演題B−2 生きる歓び  座長:吉田公代(取手協同病院)
がん治療における琵琶湖でのカヤックの効果――嬉しいこと、楽しいことがもたらすもの

市立長浜病院 伏木雅人 
がん患者におけるEmpowermentの必要性――マニュアル構築をめざして

日本医科大学医学部 森田健太郎
肺癌終末期患者との日帰りバス遠足のもたらす癒し効果

赤穂市民病院 塩田哲広
“緑あふれる環境と癒しを取り入れた完全独立型ホスピスでのがん終末期医療”

大分ゆふみ病院 山岡憲夫
一般演題C−1 地域コミュニティと癒し  座長:武井秀憲(三島社会保険病院)
医療福祉の原点をブルゴーニュで見た 〜ボーヌ・オテル・デューの視察報告〜


川崎医療福祉大学医療福祉デザイン学科 梶田博司
IS014001と癒しの環境

岡山旭東病院 今吉弘樹
温泉と運動プログラム研究会の活動報告〜地域資源を活用しての多職種と広域支援センターの達携〜


別府リハビリテーションセンター 児玉徹
友の会活動と癒し

大分記念病院 高田三千尋
一般演題C−2 音楽の癒し  座長:齋藤ゆみ(京都大学医学部保健学科)
いつでもどこでも音楽を 〜在宅音楽療法の導入とその意義〜

アート・コンサルティング・ファーム 諸橋有子
音楽療法で四季のコンサート開催 〜少しの緊張感といきいきとした笑顔の中で〜、


介護老人保健施設ヴァル・ド・グラスくじゅう 三重野寿一
「失語症者と家族のつどい」の活動を通して 〜音楽とピア・カウンセリングによる癒し〜


別府リハビリテーションセンター 岩崎裕子
音楽によるヒーリングの効果 〜入浴での試み〜

永冨脳神経外科病院 山崎祥芳
病院での「癒し」を感じていただくために〜急性期病院における音楽療法士の取り組み〜


岡山旭東病院 森分滋子
一般演題C−3 緑、色彩、建築と癒し  座長:梶田博司(川崎医療福祉大学)
癒しのある病院造りを目指して 〜建築に携わった経験から〜

東濃厚生病院 山瀬裕彦
医療福祉施設の色彩デザインのポイント:床編

関西ペイント株式会杜 石原麻子
エコロジーガーデンによる癒し効果 〜エントランスホールに室内庭園〜

取手協同病院 平間好弘 
病院の取り組み「植物がもたらす癒しの効果」

岡山旭東病院 齊藤哲也
一般演題C−4 癒しの空間  座長:山瀬裕彦(東濃厚生病院)
女性採尿空間の研究

東陶機器株式会杜 賀来尚孝
2階屋上花畑7年目を迎えて(4報)花畑の温度変化について

市立御前崎総合病院 塚本隆男
2階屋上花畑7年目を迎えて(3報)

市立御前崎総合病院 鈴木定孝
放射線検査室における癒しについて

厚生連鶴見病院 内藤秀一
放射線撮影室の癒し

青梅市立総合病院 村木晃
一般演題D−1 リラックスできる癒し  座長:柳 弘(法政大学)
癒されるクリニックを目指して 〜せせらぎが奏でる癒しの空間〜

なみおか腎・泌尿器科クリニック 高橋信好
外来における化学療法中のリラクゼーション 〜コーヒーの香りと音楽を用いて〜

厚生連鶴見病院 野添巳子
フットケアにおけるオイルマッサージ効果

永富神経外科病院 清原千加
要介護高齢者の美容とコミュニケーション――おしゃれでいきいき元気で

ヘルスケア理美容ネットワーク 南 弥生
超音波美顔器を使用した高齢者とおしゃれの空間づくり

デイサービスアリスの夢 都祭浩美
一般演題D−2 日々の楽しみ  座長:高橋信好(なみおか腎・泌尿器科クリニック)
借景写景…失敗!! 〜病院という無機的環境のなかでひとがやすらぐ場面は何処だろう〜

大久保病院 浅倉祐輔
一燈園における「癒し」

サンヘルスピア一燈園 安部益夫
グループホーム・エンにおける若手アート集団・ドットシータと入居者のふれあい

グループホーム・エン 渡辺安子
患者様ライブラリーにおける癒しづくり

岡山旭東病院 澤田京子
展示コーナーでの取り組みと癒し 〜情報コーナー「健濠の駅」〜

岡山旭東病院 田村尚子
一般演題D−3 リハビリテーションの癒し  座長:邊見公雄(赤穂市民病院院長)
トレーニングマシンが与えるリハビリ意欲について

介護老人保健施設萌木の村 中平武志
病院のリハビリテーション専門職員からみた『癒し』について 

京都きづ川病院 中本隆幸
通所リハビリテーションにおける癒し

ちゅうざん病院 上里勝美
障がい者用入浴設備の開発への取り組み

別府リハビリテーションセンター 吉村憲人
一般演題D−4 “生きる”を支える  座長:出田節子(出田眼科病院理事長)
少子高齢化地域における子育て支援活動と高齢者とのふれあい

大久保病院 工藤真琴
食彩浪漫(老満) 〜食へのこだわり 最期まで生きるということ〜

介護老人保健施設サンライフ聖峰 太田雅二
家庭のぬくもりは癒しの源

厚生連老人保健施設シェモア鶴見 星野哲人
やっぱり家族がいちばん 〜長生きしてよかった〜

介護老人保健施設萌木の村 安藤由美子
“生きる”を支えるということ

ひまわりホームヘルパーステーション 岩瀬眞由美
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