バックナンバーはこちらをご覧下さい。 | ||
(2012年4月19日刊行) | ||
「生命がめざめる癒しの環境と医療」 −第9回茨城全国大会報告− |
||
〜最新号の巻頭言から〜 | ||
「目覚め」と言う言葉には魔法がゆっくり解けたときの響きがある。今まで眠っていたものが覚醒するだけでなく、今まで隠れていた才能や能力やその他もろもろがひとつずつ、ドアを開けて出ていくようだ。それは前向きの変化であり、待ちうけるものに喜びを伴うものである。 ディズニー映画の眠り姫が100年の眠りから目覚める場面を覚えておられるだろうか。子ども心に、「きれいー」と心から感動した。その同じ場面を20年後に幼い娘に見せたとき、娘が思わず心から「きれいー」と、同じ声をあげた。家族も友人の他の誰も、出さなかった声だ。私の心に灯りがともった。この娘は、私と同じ感性を受け継いでいる、間違いなく。心の継承という新しい概念が私の心に目覚めた瞬間だった。 『人形の夢と目覚め』。ピアノをかじったことのある人は、このタイトルに見覚えがあるだろう。言葉から来る印象で期待に心を躍らせたことを思い出す。人間には、そこにないものを鮮明に想像する「視覚心象」という能力がある。「人形の夢」と言う言葉に空想をふくらませ、「目覚め」にトレモロかアルペジオの波が押し寄せるものだと思っていた。姉にせがんでピアノで弾いてもらった時、正直、がっかりした。今は、そのピアノ曲が巷でバックグラウンドミュージックとして鳴っていても、タイトルから呼び起こされる心象とは違うけれどと、心の中でなんとか折り合いをつけている。 そもそも「目覚め」とは、眠りから覚める(wake up)と言う意味である。睡眠があってこそ、目覚めがある。ストレスが解除され、体もリラックスした状態にもどるのが睡眠だ。朝は、交感神経の活動が亢進したり、副腎皮質ホルモンが分泌されたりして、体は活動するのに適した状態になる。生体防御の正常な反応だ。 朝起きてすっきりするための方法には、いくつかある。体内時計をリセットするために太陽の光を浴びる、カラダが活動に向かっていくためにストレッチ、酸素を取り込み気分をリセットする深呼吸、睡眠中に失われた水分の補給、交感神経を目覚めさせるやや熱めのシャワー、足裏を刺激し脳を活性化させるウオーキング、体温をあげる炭水化物(糖質)中心の朝食は脳を働かせ、やる気や集中力が増す。 いっぽう、目覚めという言葉は自分の本質を自覚する〈come to one's self〉という意味でもつかわれる。自我に目覚めるawake to one's self とか、自らの価値に目覚めるbecome conscious of one's…などの意味もある。個々の人間においての生命の目覚めは、「自らの価値に目覚め、希望を見出し、前進する」という、とくに根拠はなくても、心から湧きあがってくるポジティブな思考を表現したものだ。 地球の生命は宇宙の中から生まれた生命というだけでなく、進化しつづけた。今まで存在しなかった「考える存在である人間」が地球の生態系に加わったことが、地球の生命体の目覚めであると思う。眠っていた地球の生命力がむくむくと頭を持ち上げ、自らの価値を高め、その価値を凌駕することではなかろうか。 医療提供者が「医療とはどうあるべきか」という気持ちに目覚めたら、患者の自己治癒力に注目し、医療施設は癒しの環境に変わるであろう。安心できる医療、緑の病院でリラックスして、効率的に痛みのない医療を受け、元気になり、生きる歓びを手に退院する。これが、医療に目覚めると言うことである。 土浦協同病院で催された第9回癒しの環境研究会全国大会では「生命がめざめる癒しの環境と医療」をテーマに2009年2月に盛大に行なわれた。ワークショップやシンポジウム、一般演題にはひらかれた議論があり、希望を現実に変えようとする人間の意志があふれた。市民公開講座や文化講演は文字通り、市民のための生きる活力となる内容充実したものであった。これらの力強い講演やご発表の数々が、ぜひ、読者の皆さまの感性を目覚めさせてくれますように。 |
||
|
||
最新号 主要目次 『癒しの環境』 Vol.17 No.1 CONTENTS 2012.3月 T.特集 「生命がめざめる癒しの環境と医療」 ―第44回研究会・第9回茨城全国大会報告― ※所属等は開催当時のものです。 |
||
講演 ◆大会長講演「癒しの医療を考える」 総合病院土浦協同病院 院長 藤原秀臣 ◆基調講演「生命が目覚める癒しの環境」 癒しの環境研究会代表世話人・日本医科大学医療管理学教室 助教授 高柳和江 ◆特別講演「ロボットスーツHALと癒し」 筑波大学大学院教授・CYBERDYNE株式会社CEO 山海嘉之 ◆特別講演「緑の癒しと環境――ミリューセラピーについて」 東京農業大学バイオセラピー学科 教授 浅野房世 ◆市民公開講座「癒しの食環境――疾病病理学と国際疫学の成果から」 京都大学名誉教授 家森幸男 ◆市民文化講演「和歌と古典にみる癒しの世界」 佐賀医院院長、作家 佐賀純一 ◆シンポジウム「癒しの心と医療の再生」 生命輝かそう日本の医療人 元気の出る病院づくり 〜一地方病院のささやかな試み〜 赤穂市民病院 院長 邉見公雄 医療における癒しの役割 特定医療法人つくばセントラル病院 理事長、院長 竹島徹 地域環境に調和した癒し空間の創設 ―既存建築からの再構築:できることからはじめた― 長野県厚生連・長野松代総合病院 院長、事業所長 秋月章 癒しの心と看護のあり方――人を癒す方法としての笑い 筑波大学大学院人間総合科学研究科看護科学専攻 教授 林啓子 ◆ワークショップ1.「病院における癒しのあり方と実践」 音楽(音)を用いての癒しのあり方と実践 淑徳大学国際コミュニケーション学部教授、日本音楽療法学会認定音楽療法士 橋多喜子 NICUにおける癒しの環境への取り組み 総合病院土浦協同病院 看護副部長 大野美津江 医療スタッフ・職員に癒しが生じる時 茨城大学人文学部教授、臨床心理士 黒田浩司 笑いと癒し 群馬県済生会前橋病院腎臓内科部長、笑い療法士4期生 河合弘進 アート・ディバージアム(Art Diverseum) 医療法人惇慧会理事長 穂積恒 ◆ワークショップ2.「緩和ケアにおける癒しの環境の取り組み」 一般病棟での看護管理の実践 JR東京総合病院看護師長、緩和ケア認定看護師 渡邊茂子 緩和ケア病棟での看護実践 水戸済生会総合病院緩和ケア診療科・看護課長 黒沢薫子 当たりまえの日常生活を取り戻すためのリンパ浮腫ケア 医療法人明和会中通総合病院リンパ浮腫ケア室 苅安真佐美 訪問看護ステーションにおける緩和ケア 取手協同訪問看護ステーション 訪問看護認定看護師 横井由美子 癒しの空間・家族との大切な時間創り 〜緩和ケアチーム・がん相談窓口での活動〜 高山赤十字病院緩和ケアチーム・がん相談窓口 緩和ケア認定看護師 上野恵子 ◆一般演題 1−1 音楽と癒しのサービス・実践 座長/宍戸正子(土浦協同病院看護師長) 病院コンサートの意義に関する一考察 昭和音楽大学、北里大学東病院 久保田牧子 患者さんのためのアフタヌーンティーサービス (財)操風会岡山旭東病院診療技術部栄養課 大塚敦子 医療と文化の融合に向けて (財)操風会岡山旭東病院院長 土井章弘 急性期病院での院内コンサートの取り組み (財)操風会岡山旭東病院事務部企画課 栗原泉 フィッシュ哲学を取り入れて活気ある職場作り! 樋口美智子 静岡済生会総合病院 南10階病棟 1−2 自然環境・水・緑 座長/吉田公代(取手協同病院看護部長) 患者さんとご家族が寄り添える空間を目指して 医療法人惇慧会外旭川病院看護師 佐藤淳子 自然の恵み ――四季をとおした癒し 有料老人ホームソフィー 高橋修 進化する癒しの病院・これからの園芸福祉 (財)操風会岡山旭東病院業務管理課 齊藤哲也 癒しと温暖化防止(7報) 市立御前崎総合病院 塚本隆男 高齢者への優しさが住環境となる 医療法人笠松会有吉病院住環境改善係 田村信幸 1−3 心のケア・リハビリ、患者支援 座長/今高國夫 (烏山診療所院長・茨城県 医師会理事) アロマテラピー講習会の職員への効果・検証 財団法人操風会岡山旭東病院 中村薫 愛情ある治療は傾聴から始まる 〜入院患者さんへの積極的傾聴から届く心の奥の声〜 医療法人大久保病院カウンセラー ユイコハウス がん患者支援チャリティーイベント リレーフォーライフからの学び 医療法人大分記念病院 宮川ミカ 不安な両親を癒す面会ノートの効果 総合病院土浦協同病院 総合周産期母子医療センターNICU 畑岡静子 ソーシャルワーカーのかかわりにおける癒し 総合病院土浦協同病院福祉医療相談室 山本いづみ パーキンソン病の方が笑った〜周りのみんなからの声援を受けながらの車椅子練習を 通じて〜 財団法人榛名荘病院 理学療法士 西田尚 1−4 文化・芸術・音楽・絵画(色彩) 座長/広瀬真知子(なめがた地域総合病院看 護師長) 「癒しの環境を考える研究会」としての活動報告 大阪府済生会茨木病院 井村智弘 病院における写真展示の取り組み (財)操風会岡山旭東病院 事務部健康管理課 難波紀子 フラの活動を通して得られたもの 総合病院土浦協同病院 総合周産期母子医療センターNICU 石井瞳 より良い癒し空間への取り組み 介護老人保健施設勝平苑 近江谷久美 大学生とのコラボレーションによるアート・イン・ホスピタルの実践 筑波メディカルセンター病院 長島明子 1−5 アメニティ・交流・その他 座長/佐久間正祥(水戸赤十字病院院長) 医者のイライラについて(医者も人間ですから) 岡山旭東病院内科 堀内武志 病院施設アプローチ空間の癒し景観評価 札幌市立大学 吉田惠介 患者と医療者が望むトイレの研究 癒しのトイレ研究会 賀来尚孝 放射線課アシスタントの役割 〜安心できる検査・治療環境の提供を目指して〜 財団法人操風会岡山旭東病院 河村武人 ITと癒し 〜グループウェアによる院内コミュニケーション活性化〜 財団法人操風会岡山旭東病院 榊原祥裕 癒しの市民との共有庭造りへの取り組み 〜つくば市研究学園市内のペデトリアンデッキへの展開〜 筑波メディカルセンター病院施設管理課 遠藤薫 リハビリバスツアーのすすめ 〜竹内整形外科の実例より〜 竹内整形外科 竹内裕人 2−1 笑いと癒し・福祉・在宅医療 座長/飯塚規子(土浦協同病院看護師長) 看護教育の中での笑いと癒し 愛知県医師会春日井准看護学校 渡邉弘子 パッチアダムス クラウンツアーを迎えて 筑波メディカルセンター病院 石井寛 実践活動報告〜腹話術を用いて患者の笑顔を引き出す〜 大阪府済生会茨木病院 井村智弘 訪問診療に拒否的であったが、笑い療法士モード(雑学力)が有効であった笑例 医療法人北海道家庭医療学センター 佐藤弘太郎 2−2 倫理・心理・緩和ケア・遺族会 座長/磯邉靖(総合病院土浦協同病院) 倫理研修による患者・家族・職員の癒し 財団法人操風会岡山旭東病院 山本清美 心理アセスメントとしてのコラージュ技法を用いたクリエイティヴ・セラピー NPO日本クリエイティヴ・セラピスト協会 丸林恵造 緩和ケアチームにおける笑い療法士の役割 群馬県済生会前橋病院緩和ケアチーム 河合弘進 自然を体感できる病棟〜ホスピス病棟における癒しの環境づくり〜 医療法人惇慧会外旭川病院ホスピス病棟 工藤真実 症例報告 堀内秀之 緩和ケア病棟における遺族会 〜癒しとしての「ひまわりの会」 つくばセントラル病院 佐藤絹代 2−3 アメニティ・コミュニケーション・その他 座長/岡本知子(つくばセントラル病院副看 護部長) 治癒意欲を高めるためにコメディカルとしてできること 医療法人出田会呉服町診療所 高山裕加 療養生活をともにした仲間を亡くした若者への支援に関する研究 信州大学医学部保健学科 鈴木泰子 病院アメニティ改善による癒しの環境づくり 公立邑智病院泌尿器科 森田祐司 中小病院におけるエスコート係の取り組み (財)操風会岡山旭東病院医療秘書課 木口智明 癒されるクリニックを目指して(3)フットケアセラピー なみおか腎・泌尿器科クリニック 鈴木理絵 美術館のアウトリーチを放射線治療室に設定する試み 一宮市立市民病院放射線治療品質管理室 水谷武雄 |
||
バックナンバーはこちらをご覧下さい。 |