癒しの環境研究会概要
身体と心を共に癒す、ほっとする、あたたかな療養環境を「癒しの環境」と呼んでいます。 本研究会は「癒しの環境」とは何か、何をすべきかを、患者の立場に立って考え、具体的、学際的に研究しています。
将来の医療・療養環境の向上に向け、建設的に、意見を出し合い行動して行こうと考える、医師・看護師・建築家・インテリアデザイナー そして患者さんなどが集まって、研究している会です。
代表挨拶
1994年12月癒しの環境研究会は、生まれた。米国でJCAHO(民間組織医療施設認定合同機構)ができ、医療評価が始まっていた。日本でも病院の評価をして医療の質を高めよう。全国の心ある病院が参加して日本で、医療の質に関する研究会ができた。まず、全国の病院を見て回った。当時、日本の病院はまだ、玄関で靴を履きかえていた。院内感染を防ぐという名目で、重ねられたスリッパをぺたぺたとはいて、頭に無菌のスカーフ、顔にマスクで病院見学をした。これが感染予防のための最新の病院?良いでしょうと院長が自慢する病院では広いロビーにシャンデリアが天井にでんと鎮座して、患者さんが狭い6-8人部屋に寝ていた。病院には理念も、患者さんの権利もなかった。病院見学帰りの新幹線で、青梅総合病院星和夫院長(当時)と東京大学病院小島道代看護部長(当時)と、これではいけない、癒しの環境研究会を作ろうと決起した。たった3人での立ち上げだった。
本来、医療は自ら治す力である自己治癒力を高めることであり、人間の身体の修復は患者さん自身が行なう。手術や薬は修復力を高めるだけで、医療提供者はこのためのサポートが仕事である。このときに、身体免疫を高めるサポートとして癒しの環境が重要なのである。
実は私は、造園された緑あふれるオアシスの中の白亜の病院で世界最新の機器に囲まれて世界一流の医師が招聘されているクウェートの小児外科専門病院で小児外科部長として10年間働いていた。アラビアの患者さんの自然治癒力が大きいことを実感し、英国式理論と経験に裏付けされた医療を学んできた。その後ヨーロッパにも米国にも病院や医療管理の勉強にいった経験がある。
1995年1月20日、有志が10数人が集まって、日本医科大学管理学教室で初めての世話人会を開いた。奇しくも阪神大震災が起こった3日後だ。癒しは、病院だけではない、震災現場にも必要だ。世話人の一人山本保博救命救急教授からPTSDということを学んで社会に広めたのは、癒しの環境研究会である。癒しの環境研究会のメンバーは、被災者がPTSDにならないように神戸にお花を100キロ、200キロと届け、口紅を届けた。癒しの重要性を実感した。
癒しの環境研究会が創設されたことがマスコミで報じられると、報道初日は50人から問い合わせがあり、実際の研究会は100人が集まり、200人が会員になってくださった。研究会会員には、患者さんも医師、看護師をはじめとする医療提供者もいる。みんな平等に語り合う会だ。年に3回の研究会では、まず、全員が人間としてテーマについて語りあう。その後で専門家の講演だ。癒しの環境研究会では、医療提供者だけではなく、病院をつくる建築家、インテリアコーディネーター、アーティスト、それから主役である 患者さん、それぞれ異なる立場の人たちが集まって、何が本当に自己治癒力を高めることができるのか、そこに行くと治る気がして、実際に 治る病院にするにはどうしたらいいのかを話し合い、研究してきた。不平不満をいう会ではなく、建設的な意見を言い合う場として発足し、継続している。完全に参加型の研究会を運営してきた。
2001年の赤穂市市民病院を筆頭に癒しの環境研究会全国大会が始まり、年に一度おこなっている。北海道から沖縄まで、全国各地の医療福祉施設に癒しの環境の概念を広め、その地域の患者さんの自己治癒力を高めるようにしていこうというものだ。日本の医療施設は診療所が大きくなっただけの病院であったり、医療提供者にとっての便利な機能性が追求されていたりすることが多かった。戦後30年たって、日本の病院も患者さん視点の、きれいな、癒しだと思える病院がたくさん建設されてきた。癒しという言葉が医療界の中で、認知されてきたのだ。
2005年からは癒しのソフトとして、「笑い」を取り入れるべく、笑い療法士を養成することにした。2014年10月に10期生まで合計740人の笑い療法士を認定した。全国に笑い療法士がさらにレベル高く広がって、将来は国家資格にして、笑い療法士のいない病院はないくらいに発展することを願っている。
2014年2月に20周年を記念して、癒しの環境研究会が一般社団法人『癒しの環境研究会』として、組織をととのえた。今までは社会の片隅で声を上げている存在であったが、これからは強力に急性期病院、慢性期病院、回復期病院、福祉施設、在宅など、心と体を病んでいる人がいる限り癒しの環境研究会が癒しの方向を示していくリーダーになっていきたいと考えている。
会員は、建設的な意見が言えること、というのが唯一の条件だ。癒しの環境について具体的に研究し、学際的に追求し、日本の社会では癒しがあたりまえだという意識に変えていきたいと考えている。
ぜひご一緒に活動していきましょう。今後とも一般社団法人癒しの環境研究会をよろしくお願いします。
活動内容
研究会の開催 | 各回ごとにテーマを決め、各方面の専門家や関係者のパネラーによるシンポジウムを中心に、
参加者によるワークショップや研究発表などを行なう。 1999年に5周年シンポジウムを東京で、第1回全国大会を姫路市で開催。 以来、 年に1度のペースで場所で全国大会を行っている。 |
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会誌「癒しの環境」の発行 | 会員に配付。研究会の記録の他、病院見学会や海外研修の報告、研究発表などを掲載。 【掲載論文】 A4版 カラーページを含む50〜90ページ バックナンバー 1册1,000円〜2,500円 |
病院見学会の実施 | 国内の「癒しの環境」を実践している病院や高齢者施設などを見学。 大阪市立総合医療センター、龍岡老人保健施設、東京大学医学部附属病院、亀田クリニック、ピースハウス病院(ホスピス)、青梅市立総合病院、埼玉県立がんセンター、 秋田赤十字病院、ケアタウンたかのす、宮城県立こども病院、米国海軍病院、諏訪中央病院、ケアタウン小平などを見学。 |
海外視察研修旅行 | 1997年度より実施 北欧高齢者介護施設視察、米国マクドナルドハウス視察・エデン運動研修、ニュージーランド高齢者施設視察など。2003年は急性期のあとに心と体を癒す中間施設をパリに訪ね、2004年度はスイスの医療環境、2005年度は米国・テキサス、2007年はフィンランドに行きました。 |
癒しの環境研究会 理事紹介
〈理事長〉高柳和江 一般社団法人癒しの環境研究会
医療法人社団葵会
日本医科大学非常勤講師、笑医塾塾長
〈理事〉 小林祥泰 前国立大学法人島根大学学長 医療法人社団耕雲堂小林病院名誉院長
武井秀憲 元JCHO(地域医療機構)三島総合病院 院長
土井章弘 医公益社団法人 操風会 専務理事・総院長
北原 栄 医療法人惇慧会 旭川病院 医師
中山茂樹 千葉大学大学院工学研究科 教授
江澤和彦 倉敷スイートホスピタル 理事長
東口志 藤田保健衛生大学医学部 外科・緩和医療学講座 教授
宗像伸子 ヘルスプランニング・ムナカタ 代表
渡辺玲奈 株式会社竹中工務店 医療福祉・教育本部 専任課長
〈監事〉 武久洋三 一般社団法人日本慢性期医療協会 名誉会長 医療法人平成博愛会理事長
小川孝一 公益社団法人日本マレーシア協会理事長